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相談事例集 |
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■相談事例42: 自己破産
15年ほど前から教育費、生活費、不時の出費など不足する分を夫に内緒で消費者金融などからの借金で補充してきた。しかし、この間に借金額が500万円に膨れあがり支払いに行き詰まっている。夫に言うと離婚問題に発展しそうなので、夫に分からないように自己破産したい。 |
仮に弁護士に依頼して自己破産を申し立てても、申立てを受けた地方裁判所から債権者に意見聴取書という書面が送付されますから、その書面によって各債権者は相談者から自己破産の申立てがなされたことを知ることになります。この場合、厳しい取立てはなくなるはずですが、なかには損害を少しでも少なくするために抜け駆け的に厳しい取立てをしてくる債権者が必ず出てきます。したがって、このような債権者が一社でも出てくれば、配偶者に知られないように自己破産手続きを進めることは不可能になります。 多重債務を解消するには夫婦間の協力が必要なこと、そのためには責任を一人で背負い込まないで配偶者とよく話し合う必要があること、並びに、一般的な多重債務の解決法を説明しました。 |
最近、振り込め詐欺などの話題の陰に隠れがちですが、あいかわらず多重債務者(正確には「多重多額債務者」といいます)の相談も増えています。多重債務者とは、複数の債権者から多額の債務を抱えて返済困難な状態に陥っている人のことをいいます。 このような相談を受けたとき、当センターでは、次の二点について助言し、消費者の理解を深めるように努めています。 まず、多重債務を解決する方法ですが、 1)任意(私的)整理、 2)簡易裁判所に調停を申立てての整理、 3)地方裁判所に申立てての個人再生手続きによる整理、 4)訴訟による整理、 5)自己破産という五つの方法があること、多重債務を解決しようとする場合はその前提として、「貸金3法」という三つの法律の関係を理解しておく必要があること、の二点です。そのうえで、相談者が自らに適切と思う方法を選択することになります(今回は紙幅の都合で「貸金3法」の関係は省略します)。 まず 1)ですが、裁判所などの公的機関を利用せずに私的に債権者と話し合い、利息制限法等に基づいて債務整理を行います。相談者の収入の範囲で一括弁済、又は分割弁済などの交渉を行うことになります。 1)や 2)の方法は債務額がそれほど大きくなく(3年程度で返済できる額)、保証人に迷惑をかけたくないときなどに利用されます。交渉が難しい場合は法律の専門家に依頼することになりますが、身内の人が相談にのる場合であっても、まず、専門家に依頼することをお勧めします。 安易な解決はその後の相談者のためにならないことが多いからです。 次に 2)ですが、簡易裁判所調停委員が債務者と債権者の間を斡旋して、利息制限法等に基づいて合意を成立させることによって解決を図る方法です。ある意味で調停は裁判所を通した任意整理ということができますが、調停調書には判決と同じ重みがあります。 続いて 3)ですが、これは制度が大変複雑ですので、ここでは「住宅ローンを除く負債総額が5千万円以下の個人で、将来において一定の収入を得る見込みのある個人であれば利用できます」とだけ述べておきます。 さらに 4)ですが、利息制限法に基づいて再計算した結果、債務がなくなっている場合や、払い過ぎている場合に選択します(前段については債務不存在確認訴訟、後段については不当利得返還訴訟)。この方法は個人では無理ですから法律の専門家に依頼することになります。 最後の 5)については、 3)の場合と同じく制度が複雑ですが、簡単にいえば「借金を負って支払不能に陥った者から裁判所に破産の申立てをし、債務からの免責を決定することにより、債務者に生活再建と再出発の機会を与える制度」です。自己破産の申立てについては、地方裁判所の窓口で指導してくれます。 関係書類の作成については、法律の専門家に有料で依頼しても構いませんし、個人で作成することもできます。相談者が一番気にするのは自己破産により被る社会的不利益ですが、免責が確定すれば、税金など一部の特例を除いて債務の支払義務がすべてなくなりますし、それまでの各種資格制限もすべてなくなります。 したがって、破産者が最終的に被る不利益というのは、破産宣告の後、氏名が官報に記載されて公告されること、一定期間カードやローンが利用できなくなること、及び免責後7年間は原則として新たな免責決定を受けられないことくらいしかありません。もちろん、選挙権や被選挙権といった公民権が停止されることはありませんし、戸籍や住民票に記載されることもありません。 |
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