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相談事例集
 

相談事例53: 高齢者を狙う悪質リフォーム工事


 80才をこえて一人暮らしの母は、10年以上前に老人性ウツ病と診断されて通院治療をしている。4年前から高血圧などの治療を受けている。私たちも月に1回は母を訪ねて安否を確認しているが、お盆に帰ってみると訪販で内装工事や屋根工事を契約していることがわかった。
  2件で100万円以上の支払は母の年金だけでは無理だ。母に勧誘時の経緯を尋ねても、訪販員に勧められた時、「お金がない。息子に聞かないとわからない。」と断わったけど訪販員が帰らなかったので怖くなって契約書に署名したというだけで詳しいことはわからない。
  古い家で将来は取り壊すので補修の必要はない。解約できないか。 

(50歳代 男性)


 この商法は特定商取引法で規制されている訪問販売に当たりますので契約時に契約内容が具体的にわかるような法定書面を渡さなければなりません。センターで書面を確認したところ、屋根工事は1週間前の契約でしたのですぐに解除通知をハガキで出すよう助言しました。内装工事は完了していましたが、契約書には内装工事一式、一階塗装部分とのみ記載してあり、工事内容、施行箇所、単価、数量なども不明でした。
  また、契約者の記憶に曖昧な部分が見られたので再度、主治医の診断を求めてはどうかと助言したところ、1年前からアルツハイマー症の治療を受けていることが判明しました。
  一方、工事内容について一級建築士の診断を求めるよう助言しましたが建築士は現場を見て、内装工事でなく壁の上塗りのみの左官工事だと判断、施行箇所を平面図に示し、塗装面積をもとに材料代、手間賃、諸経費、消費税を計算すると適正価格の3倍になると診断書を提出しました。
  以上のことから、内装工事一式についても不備書面、虚偽書面交付による解除及び消費者契約法不退去、困惑による取り消し(お金を払えない、息子に相談しなければわからないと断わっているのに帰らないので仕方なく契約に応じています)を通知するよう助言しました。また、アルツハイマー症の発症後であり特定商取引法の禁止行為(適合性原則違反)に当たると思われ、行政処分の対象になることを伝えました。
  業者は、無条件で解約に応じました。


 高齢者人口の増加に伴って70歳代以上の相談が昨年から急増していますが、とりわけ目立つのが訪問販売による一人暮らしのケースです。
  昨年から住宅リフォーム工事などに関する次々販売によるトラブルが後を絶ちません。
  高齢者にとって終いの住み処である家について不安を煽られると断り切れないようです。
  これらを踏まえて、経済産業省は本年8月、住宅リフォーム訪問販売に関して特定商取引法の通達を以下の通り改正、施行しました。

1. 高齢者との契約、勧誘について −適合性原則の明確化−
○老人その他の者の判断力の不足に乗じ、契約を締結させること(法第7条第3号)関係
 判断力が不足していることが明らかでなかった場合についても、通常の判断力があれば締結しないような、消費者にとって利益を害するおそれがある契約を締結させることが法違反に当たることを明確にしました。
○顧客の知識、経験及び財産の状況に照らして不適当と認められる勧誘を行うこと(法第7条第3号(いわゆる適合性原則))関係
 例えば年金収入しかない高齢者に対して返済困難な借金をさせて住宅リフォーム契約を締結するよう勧誘する行為が法違反に当たることを明確にしました。
○次々販売についても日常生活に定着している訪問販売は特定商取引法の適用除外になり得ますが、そうでないものは、いくら取引回数を重ねても適用除外になることはあり得ません。(法第26条第2項第2号)関係

2. その他の法違反に該当する住宅リフォーム販売について
○禁止行為(法第6条)関係
 例えば(事実に反して)「屋根が壊れている」「工事を既に始めたのでクーリングオフできない」等と告げることが禁止行為に当たることを明確にしました。
○書面交付(法第4条5条)関係
 例えば「床下工事一式」「床下耐震工事一式」とのみ記載することは書面交付義務違反に該当することを明確にしました。

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