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相談事例集 |
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■相談事例56: 長期有料サービス契約に潜むもの
4ヶ月前、訪問販売で3ヶ月間無料ファックス指導付きの補習用教材セットを勧められた。「無料の質問窓口を設け、分からないところを指導するから教材だけで成績が上がる」との説明だったので契約した(174万円)。しかし、ファックス指導は回答が遅くて役に立たず、子供の成績も上がらなかった。無料期間が過ぎ、有料指導を勧められたが、一科目2万円とのことで高すぎる。解約したい。
(30歳代 女性) |
法定書面の記載事項に不備があることを根拠に契約の解除を、また、説明内容に重要事項に係る不実告知があることを根拠に消費者契約法に基づく契約の取消しをするよう助言しました。事業者から中途解約規定に基づく合意解約の提案があり、145万円が返金されました。 |
一口に「長期有料サービス契約」といっても多種多様にわたります。ここで取り上げるのは、特定商取引法という法律で「特定継続的役務」として指定されている、いわゆる「エステティックサロン、語学教室、学習塾、家庭教師派遣、パソコン教室、結婚相手紹介サービス」の6つについての一般的な問題です。 この6つの特定継続的役務に関する契約が、その契約期間と支払金額について一定の要件を同時に満たす場合(契約期間についてはエステティックが1ヶ月超で他はすべて2ヶ月超、支払金額についてはすべて5万円超)、この契約のことを「特定継続的役務提供契約」といい、この契約を締結してサービスの提供を受けるものを、特定商取引法では「特定継続的役務提供」として規制しました。 前置きが長く堅苦しくなりましたが、今回の相談は、相談内容を「特定継続的役務提供」として捉えるか、単なる補習用教材の「訪問販売」として捉えるかによってその処理結果に大きな差が生じることになります。 私たちは普通、本屋さんでこのような契約を結ぶことはまずありません。相談者の場合、「3ヶ月間無料ファックス指導」に目を奪われ、「補習用教材セット」が少々高くても、「なお余りある」と思い込まされたのでしょう。そのように推測するのは、相談者にクーリング・オフを検討した形跡がないからです(訪問販売、特定継続的役務提供ともにクーリング・オフ期間は8日間)。 先に、家庭教師派遣契約は契約期間が2ヶ月超、支払金額5万円超のものと言いました。 相談者が、相談事例は特定継続的役務提供に当たる、と主張するためには、「3ヶ月無料ファックス指導」の「無料」の壁を突き崩す必要があります。授業料(支払金額)が無料ということは、外観上、この契約は学習教材の訪問販売のように見えるからです。 しかし、家庭教師は、学習指導を行う場合に、直接家庭を訪れなくても電話やファックスによって指導することも認められています。また、「授業料は無料」とされていますが、学習指導というサービスは一般社会では有料というのが常識ですから、学習指導の料金は学習教材の価格に含まれていると考えることができます。 そうしますと、相談事例は、学習指導が伴い、契約期間が2ヶ月を超え、支払金額が教材費を加えると5万円を超える契約となりますから、家庭教師派遣契約という特定継続的役務提供に当たることになります。なお、学習教材は学習指導に必要なものとして法令で「関連商品」として指定され、その費用は支払金額に含まれます。 相談事例が特定継続的役務提供ということになれば、消費者に交付すべき法定書面の内容は、訪問販売の場合に比べて格段に厳しくなります(例えば、家庭教師の指導についての契約内容だけでなく、関連商品や中途解約に関する定めなどを記載しなければいけません)。 結局、特定継続的役務提供においても確実に利益を上げることができるのは、学習指導などの「サービス」よりも、学習教材などの「商品」ですから、事業者はできるものなら商品を関連商品という法令の規制のかかったものではなく、単なる商品として販売したいというのが本音です。 消費者は、長期有料サービス契約を締結する場合は、より冷静に何をいくらで買うのか、解約の条件など契約内容を確認する姿勢が求められることになります。 |
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