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相談事例集 |
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■相談事例63: 「小学生の英語教育の導入」に潜むもの
2ヶ月前、大学生の息子(20才)のアパートに業者が訪問し、「無料だから英会話テストを受けてみないか?」と勧められたので受けたところ、さらに「英会話レッスン」を勧められた。「時間がない」と断ったが、「テストの結果に基づいて効果的学習方法を提供する」と4時間も勧誘され、教材とセットで契約した(契約金額42万円)。チケットは「3年間使用可」と説明されていたが、渡されたチケットには「有効期限1年」と記載されている。何回かレッスンを受けて教材も使っているが、高すぎて支払いも難しいので解約したい。
(50歳代 女性) |
(1)この契約は、「英会話のレッスン」を、「2ヶ月を超える期間」にわたり、「総額5万円を超える額」を支払うものであり、特定商取引法の”いわゆる語学教室”といわれる特定継続的役務を提供する契約(特定継続的役務提供契約)に当たるので、クーリング・オフや取消権の行使ができないか、(2)この契約は消費者と事業者間の契約であり、消費者契約法による取消権の行使ができないか、という方針を立てて検討してみました。 (1)については、この契約は、特定商取引法で指定する”いわゆる「語学教室」”といわれる特定継続的役務であって政令の要件を充す役務提供契約ですから、「関連商品(サービスを受ける際に必ず購入すべきものとして業者が自ら販売又は代理若しくは媒介した商品のことで、政令で指定。例えば語学教室における会話テープなど)」を法定書面(概要書面、契約書面)に記載しなければなりません。にもかかわらずその記載がありませんでしたので、「記載不備の契約書面が交付されている」ことを根拠にクーリング・オフの主張が可能である、と判断しました。 また、チケットを使用できる期間について「3年間」と説明しながら、実際には「1年間」と記載されたチケットが交付されているのは、「不実の告知による誤認」として取消権を行使できる、と判断しました。 (2)については、「チケットの使用期間」に関する説明が「重要事項に関する不実の告知」として取消権を、また、断っているにもかかわらず4時間にもわたって勧誘された末に契約している事実をとらえ、「困惑による意思表示」として取消権を、さらには、業者はクレジット会社の業務を代行してクレジット契約書を作成している点に着目し、「困惑による意思表示」の規定を準用してクレジット契約そのものの取消権を、それぞれ主張できる、と判断しました。 以上のことを相談者に伝え、大学生の子供から業者に契約の解除・取消しを求めたところ、業者は無条件で解約に応じました。 |
この相談は、特定商取引法が定める六つの「特定商取引」の中の「特定継続的役務提供」に関するものです。 「特定継続的役務提供」とは、「特定継続的役務提供契約を締結して、特定継続的役務を提供すること」をいいます。しかし、これではなんのことかさっぱり分かりませんので、少し言葉を分解して説明します。 まず、「特定継続的役務」ですが、政令で指定する”いわゆる「エステティックサロン」、「語学教室」、「家庭教師」、「学習塾」、「パソコン教室」、「結婚相手紹介サービス」”の6種類の役務(サービス)をいい、「特定継続的役務提供契約」とは、この6種類の特定継続的役務が「指定期間」、「指定金額」という二つの項目について政令で定める要件をそれぞれクリアしている役務提供契約のことをいいます。例えば、”いわゆるエステティックサロン”の場合、指定期間は「1ヶ月超」、指定金額は「5万円超」ですが、他の五つはすべて「2ヶ月超」、「5万円超」がクリアすべき要件です。 「特定継続的役務提供」とは、「特定継続的役務提供契約を締結して、特定継続的役務を提供することである」という意味がご理解いただけたでしょうか。 最近、小学生の英語教育導入の動きが強まっていますが、「学校教育だけでは足りない」と父兄が考え始めたとき、”いわゆる「語学教室」、「家庭教師」、「学習塾」”といった特定継続的役務提供の分野でトラブルが増えてくることが予想されます。「何かおかしい」と感じたときは、すぐにもよりの役場の窓口や消費生活センターにご相談ください。 |
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