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相談事例集 |
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■相談事例65: クリーニングトラブル
4ヶ月前、ダウンジャケットのシミ抜きをクリーニング業者に頼んだが、シミが取れないうえに、再洗でダウンの膨らみが消え、表の色が移染した。充填物はダウン80%、フェザー20%で側地はナイロン55%、ポリエステル45%。片側は白っぽいベージュで一方は茶色のリバーシブルになっているが、ダウンから表地に移染している。再洗しても効果はなく、風合いも変わった。クリーニング業者はこれ以上はできないというが、補償して欲しい。 |
メーカーに原因究明を求めたところ、「風合いについては折りたたんだ状態で重ねる等保管に問題がある場合、及びクリーニングの脱水時の遠心力のかけ方に問題がある場合が考えられる。その他の点については原因が特定できない」との回答があった。このことをクリーニング業者に提示したところ、業界基準により補償することで合意した。 |
クリーニングトラブルの相談は、毎年コンスタントに一定割合で存在し、その相談件数は常にサービス部門の上位を占め続けてきました。過去5年間の当センターに対する相談は次のようになっています。
13年度48件9位 14年度68件6位 15年度35件13位 16年度49件8位 17年度31件14位
では、消費者が実際にクリーニングトラブルに直面したときに、クリーニング業者はどのような基準に基づいて、どのような救済をするのかということについて話を進めることとします。 まず、クリーニングトラブルの種類ですが、多いものから挙げますと、衣料品の紛失、変退色、損傷・破損、染み、穴あき、剥離などです。 トラブルは受付から納品までのクリーニングの作業工程で起きる場合と、作業工程を離れたところ(消費者の管理の不備、染色の特殊性あるいは生地そのものの特性)で生じる場合とに大別することができますが、その意味で、衣料品を巡るクリーニングトラブルといわれるものは、繊維産業、染色産業、服飾産業、販売店、クリーニング業、消費者のすべてが関与している可能性があります。 「過失なければ責任なし」という過失責任主義は法治国家の大原則の一つですが、このように多数の者が関与した可能性があるクリーニングトラブルにおいて、「では誰に過失があったのか」を消費者が証明することは、調査に要する経費や時間などを考えると実は大変なことなのです。繊維の種類も特殊な化学組成の製品が多くなり、損害額より調査費の方が嵩むケースもありえます。したがって、トラブルの真実を極めることも大切なことかもしれませんが、一方で、消費者契約の経済合理性や迅速な解決ということも尊重する必要があります。 このような見地から(財)全国生活衛生営業指導センター(「Sマーク」のある店で構成)及び全国クリーニング生活衛生同業組合連合会(「LDマーク」のある店で構成)では、クリーニング事故賠償基準を次のように定めています。
1. 事故の原因がクリーニング以外にあることを業者が証明しない限り、業者は消費者に補償をしなければならない。 2. 賠償額は原則として物品の再取得価格を基準として、購入時からの経過年数に応じた補償割合で算出される。 3. クリーニングした品物を消費者が受け取ってから6ヶ月、あるいは品物を預けてから1年を過ぎると補償されない。 4. 品物を紛失した場合など、2)による賠償額の算出が適当でないときは、ドライクリーニングならそのクリーニング代金の40倍、ランドリーなら20倍の金額が補償される。
この事故賠償基準は、過失責任主義における立証責任が消費者から事業者に転換されているところに特徴があります。 「Sマーク」や「LDマーク」を店頭に表示しているクリーニング業者(県内業者のほぼ40%)は、この事故賠償基準に沿って対応することになりますが、その他のクリーニング業者(県内業者のほぼ60%)の場合は、この事故賠償基準に準じて補償するところ、あるいは過失責任主義の原則を採用するところと対応が分かれることが予想されます。 |
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