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相談事例集 |
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■相談事例77: 投資用分譲マンション
1ヶ月前、今は他の部署にいるかつての上司から他県の投資用分譲マンション販売業者を紹介された。職場近くのファミリーレストランで紹介者とともに業者の説明を聞いたところ、1) 購入することになる新築マンションは1室3300万円(30年ローン)、2) 購入後の賃貸業務その他の事務一切は業者が行う、3) 購入後10年間は、業者が何らかの形で家賃収入を保証する、4) 購入後10年経過後に処分の必要が生じたときは、業者が残債価格以上の額で買い取る、5) 購入者に負担は一切生じない、といいことずくめだった(ただ、この条件は契約書には記載されておらず、代表取締役印を押捺した別紙1枚に箇条書きされていた)。 紹介者の手前もあり、悪い条件ではないと思ったので、その場で2室の購入契約を締結した(契約時点で1室について300万円の値引きがあったため契約金額は総額で6000万円)。しかし、あまりに金額が巨額だったため不安になり、契約したその日に直接口頭で解約を申し出たが、「すでに署名押印まで済んでおりクーリング・オフはできない」と断られた。それから2週間後、クレジットの与信が1室分しか通らなかったとのことで1室を購入することにしたが、家族の反対が強いため、この1室分についても解約を申し入れたところ、解約料として2割(1200万円)を要求された。不安なので解約したい。
(40歳代 男性) |
相談者は、まだ、契約書面を交付されていなかったので、とりあえず、契約解除通知書を送付するよう助言しました。業者から、「解約料の支払いがない場合は法的手続きをとる」との回答が書面でなされたので、弁護士に相談するよう勧めました。その後、無条件で解約できたとの報告がありました。 |
◆アドバイス この相談は投資に関するものですが、金額が大きく、失敗すると人生そのものが暗転するおそれがあります。このような勧誘を受けたときは、セールストークを鵜呑みにすることなく、また、法令知識に頼って独力で解決しようとせず、必ず信頼できるひとに相談されることをお勧めします。 この相談の場合、契約条件そのものには何ら問題がなく、むしろいいことづくめというのが逆に気になります。契約期間が10年以上にわたっており、この間一貫してこのような好条件を業者が維持していけるのかというのが最大の疑問です。例え、10年以上にわたって家賃収入を保証し、希望すれば残債価格を上回る金額で当該不動産物件を買い取るとの約定がなされていたとしても、現実に販売・管理する業者にその時点で約束を守る体力がなければ(場合によっては業者はすでに倒産して消滅している可能性もあります。社長印を押した一片の紙切れなど何の役にも立ちません)、このような好条件は絵に描いた餅でしかありません。その時点で業者を「詐欺だ」となじることはできるかもしれませんが、業者も無い袖は振れません。 かつて、バブル期といわれた頃にも一流企業の部課長クラスがマンション投資、ホテルオーナー投資といった利殖商法に手を出し、人生を狂わせたことがありました。当初の勧誘文言と現実の見込みとの間に狂いを生じたことからクレジットの支払いに追われ、商品先物取引に走ったり、会社の金に手を着けたりすることがあったのです。勧誘された時に、好条件に惑わされることなく断ることができていたら、組織人として豊かな人生を送れた人たちではないかと思います。 マンション投資もすべて悪いと決めつけることはできません。やってみようと思ったときは、業者が「故意に約束を守ろうとしない場合」と「倒産した場合」とを想定し、そのどちらの場合にも対応できるだけの資金の準備をしたうえで、家族の同意を得ておくことが必要です。 過去に投資に失敗して多重債務に陥り、一家離散した人たちが多数います。投資は慎重の上にも慎重であるべきです。 今回の相談の場合、かつての上司は紹介料を業者から受け取っていたとのことであり、このような職場は要注意です。いいことずくめの契約というのは、契約欲しさのあまりその場しのぎのでたらめがあり得ることを肝に銘じておく必要があります。 |
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