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相談事例集 |
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■相談事例78: 新成人に贈るおまじない「儲・美・頭・信・健」
10年以上前、英会話のビデオを購入したことがある。その時と同じ会社から、「複合サービス会員クラブの会費が未納になっている。未納料金7万円を払って欲しい」という請求書が、再三実家に送られてくる。会員になった覚えは全然ないが、支払うことで済むものなら支払おうと思う。
(30歳代 女性) |
根拠のはっきりしない請求に安易に応じると個人情報の流出につながり、新たなトラブルに巻き込まれるおそれがあるので、「転居先不明」で返送するよう伝えました。 |
皆さん方の中に、「『貴金属買ったらクラブ退会』詐欺組織トップ?逮捕(容疑で県警)」(平成19年11月8日付け読売新聞)という記事を覚えておられる方はいませんか?当時は各新聞で取り上げられていましたが、今回の相談者も対応を誤ればこの種犯罪に巻き込まれていた可能性があります。 この犯罪を、当センターなりに分析すると次のようになります。まず、被害者は20歳〜22歳当時、当選しましたなどと呼び出されるアポイントメントセールスの被害に遭っているはずです(一次被害。普通、60回払い程度のクレジットを組む。被害額50万〜100万円くらい。この時、商品を購入させられるとともに、複合サービス会員クラブの入会を勧められている。これが今回の犯罪の仕掛けとなっている)。クレジットを払い終わった頃、新たに、仕掛けられていた複合サービス会員クラブの会費の要求が始まります(二次被害。会費は毎月3千円くらい。この間最低でも5年以上経過していますから、被害者には何のことか見当がつかず困惑することになります)。被害者にとってはまったく無意味な出費なので、早く退会したい一心で清算を焦ると、冒頭の新聞記事のような犯罪に巻き込まれることになる(三次被害。なお、アポイントメントセールス及び複合サービス会員クラブについては、昨年5月号の本欄で取り上げています)。 アポイントメントセールス専門業者がなぜ20〜22歳の若者を狙うのかということですが、1) この商法はクレジットなしでは成り立たない、2) 日本では親の同意なしでクレジット契約を締結できるのは20歳からである(原則として成人にならないと行為能力《単独で完全に契約を締結できる能力》を取得できない)、3) 若者は純粋で世事に疎く、したがって騙しやすく、かつ脅しに弱い、4) 後日騙されたことに気付いても、恥ずかしさが先に立ち、経済的に追い込まれていない限り、警察などに駆け込むことをしない、といったことがあるからではないかと推定します。 新成人の皆さん、市民社会はありとあらゆる条件(社会生活を送るうえで有利あるいは不利に作用するもの)の組み合わさった人たちで構成されています。 道徳、倫理あるいは条理を尊重しながら活動している物心ともに余裕のある人、法律に抵触しさえしなければ何をやってもいいと考える人、例え法律違反をしても生きていくためには仕方ないというところまで追い詰められている人、騙されるのは弱者であり騙される方が悪いと考える弱肉強食論者、まさにさまざまです。 新成人の皆さんは、これまで、両親の手厚いガードで保護され、食い物にされないよう法律で守られてきました。しかし、これからは、保護は期待できません。独立した社会人として対等の取扱いを受けることになるわけですが、そのためにはそれなりの世渡りの判断基準を準備しておくことをお勧めします。 かつて、消費者トラブルに携わった法律家が、トラブルの内容を分析したところ、儲け話、美容、資格、信仰、健康に関するものが圧倒的に多かったそうです。そこで、これを「儲・美・頭・信・健」(ちょびっとしんけん)というキャッチフレーズ風にまとめて注意を喚起していました。消費者トラブルは見知らぬ他人からもたらされるとは限りません。マルチや投資話といった問題商法は、何気なく、時には巧言令色を伴いながら、身近にいる兄弟、友人、知人、各種代理店経営者などからもたらされる場合が多いのです。 問題商法を勧められたときは「本当かな?」という一抹の不安が胸をよぎりますから、自分の勘を信じて「消費者トラブルは儲・美・頭・信・健」と唱えてください。その後は冷静に対処できるかと思います。 なお、現在、クレジット関係の法改正が検討されていますから、アポイントメントセールスは下火になるのではないかと想定しています。 |
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