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相談事例集 |
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■相談事例79: 危険な内職
4ヶ月前、インターネット上でデータ入力の仕事を募集していた。資料を請求したところ勧誘員から電話があり、「最初に研修を受けてもらい(研修費用として 60万円必要)、簡単なレベルチェック試験に合格してもらう必要がある。それに合格したらすぐに仕事を紹介する。必ず儲かるので、その収入からクレジットの支払いはできる。いつでもやめられるし、そのときはクレジットの支払いもなくなる」と勧められ契約した。レベルチェックを3回受けたが合格できず、解約も断られた。解約したい。
(20歳代 女性) |
特定商取引法で業者に交付を義務付けている法定書面に不備があることを根拠に契約の解除を、また、同じく同法で取消しの対象としている事実関係に「不実の告知」があることを根拠に契約を取消すよう伝えました。 事業者は解約料を請求してきましたが、交渉の結果、既払金の放棄(10万円)で合意解約にいたりました。 |
これまでも本欄で何度か業務提供誘引販売取引(俗称・内職商法)を取り上げてきましたが、最近、また被害が顕在化していますので、その特徴をあらためてまとめておきます。
1. 勧誘時の問題点 ○電話やインターネットでは、勧誘員の顔が見えません。この種勧誘の場合、多かれ少なかれ、罰則規定に触れるいいことずくめの勧誘が行われます。例えば、「月に5万円は確実なので、毎月2万円のクレジットの支払いも可能。1年で払い終わる人もいる」(不実の告知)、「簡単な資格試験がある」(実際には合格させない。合格しなければ事業者は仕事を提供する債務を負わない《故意による事実の不告知》)など。
○「優秀なスタッフが指導します」と言われても、電話の不通時間が長かったり、電話に出てくれないことが多い。
○「あなたの身分を証明するもの、例えば運転免許証や保険証などのコピーをファックスで送ってください」と勧誘員に依頼されたら、商品代金等を融資するのは貸金業者だと考えておく必要があります。
○契約締結時に商品等の購入を求められますが、購入代金等の融資の仕方でクレジット会社か貸金業者かが分かります。 クレジット会社の場合、商品等の代金を直接事業者の口座に振り込み、手数料総額及び総支払額を、書面で顧客に直接明示します。 一方、貸金業者は、いったん、消費者の口座にお金を振り込み、消費者から事業者の口座にお金を振り込ませる迂回融資方式をとります。しかも、利息の支払総額及び総支払額など最終的に顧客がいくら返済することになるのかを明示する書面類を交付しません。 また、新たに支払手段として、国際カード決済によるトラブルも増えています。
2. 契約後の問題点 ○一般に、契約を取り消す場合は勧誘員のセールストークが決め手になりますが、勧誘員は似たような事業者を渡り歩くことが多く、しばらくすると「退職した」などの理由で連絡が取れなくなることが多いようです。労働者名簿(労働基準法107条)及び賃金台帳(同108条)で確認する手段は残されていますが、個人レベルでは不可能です。
○顧客が資格試験をクリアするのに躍起になっている間に、事業者との連絡がつかなくなるケースが一般的です。その段階になって初めて、顧客は諸々の矛盾に気付かされます。契約した事業者そのものが幻だったというケースさえあります。仕事(業務提供利益)は提供してもらえないのにローン(特定負担)だけが残るというのは不合理ですから、顧客は内職取引を解除することになります。しかし、この段階になると、それまで沈黙を決め込んできた貸金業者が発言を始めます。「当社と顧客の契約は、金銭消費貸借契約(貸金業規制法2条3項)であり、個品割賦購入あっせん取引(割賦販売法2条3項2号)ではない。したがって、この融資には支払い停止の抗弁(同法30条の4)は適用されないので、これまでどおり払い続けてもらう」と。この貸金業者の主張にはかなり無理があるのですが、今、全国で問題になっており、裁判になるケースも生じ初めています。 この世にうまい話はありません。「顔の見えない契約」にはくれぐれもご注意ください。 |
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