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相談事例集 |
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■相談事例81: 国内パック旅行のキャンセル料
電話で夫婦二人の国内パック旅行を申し込んだ。しかし、夫の都合がつかなくなったため、出発16日前にキャンセルを申し出たところ、旅行代金の20%(6万4千円)のキャンセル料を請求された。申込金はまだ支払っていない。キャンセル料を支払う必要があるか。
(50歳代 女性) |
「申込金を支払う前であれば、原則として、まだ契約は成立していません。キャンセル料の支払い義務は発生していないこと」を主張してみるようアドバイスしました。後日、相談者から、「事業者から『申込金の入金前であることが確認できたので、キャンセル料の請求はしない』との回答があった」との報告が届きました。 |
旅行会社が扱っている旅行には「企画旅行」(旅行会社が旅行を「企画」するもの)と「手配旅行」(旅行者による「手作り指向の強い」旅行)とがあります。企画旅行はさらに「募集型企画旅行」と「受注型企画旅行」に分かれますが、今回は一般的に利用されることの多い募集型企画旅行(パック旅行)について、注意すべき点をまとめておきます(なお、手配旅行については、以下に記載することは該当しませんのでご注意ください)。
1. 旅行契約が成立するのは、旅行者が申込書に必要事項を記載して申込金を添えて申込み、旅行会社が承諾し申込金を受け取ったときです(標準旅行業約款1)募集型企画旅行契約の部。以下「約款」という)。民法の原則に従えば、契約の当事者双方が合意した(口頭も含む)ときに契約は成立しますが、旅行契約においては、約款によってこの原則が修正されています(8条1項)。したがって、窓口で申込書を作成提出しても、申込金を払わなければ契約が成立しないことになります。なお、電話による申込みは、旅行契約の予約の申込みとみなされ、旅行者は、旅行会社が定める期間内に、申込書と申込金を提出しなければならないことになっています(約款6条1項)。所定の期間内に申込書と申込金が提出されない場合は、予約はなかったものとなります(約款6条3項)。おって、インターネットによる通信契約の申込みの場合は、申込金の有無にかかわらず、旅行会社の承諾の通知が旅行者に到達した時に成立します(約款8条2 項)。
2. 旅行契約が成立すると、旅行会社は速やかに「契約書面」を旅行者に交付しなければなりません(旅行業法12条の5、約款9条)。契約書面というのは、旅行会社から旅行者に対して渡される「旅行日程、旅行サービスの内容、旅行代金その他の旅行条件及び旅行会社の責任」に関する事項を記載した書面のことをいいます。ところで、旅行業法では、契約成立前に日程・サービスの内容などを記載した「説明書面」も渡すことになっています(12条の4)。この説明書面と契約書面の内容が重複しているため、旅行会社はパンフレットに「旅行条件書」として両方の内容を記載しています。つまり実際には、パンフレットが契約書面を兼ねていることになります。パンフレットの旅行条件書に「本書面は取引条件説明書面及び契約書面の一部となります」という趣旨の記載がなされているのはこの意味です。
3. 旅行者が決められた日までに旅行代金を支払うと、旅行会社は、契約書面交付後、旅行開始日の前日までのその契約書面に定める日までに、「旅行日程・利用予定の宿泊機関及び重要な交通機関」を確定した書面(「確定書面(最終日程表)」)を旅行者に送らなければなりません(約款10条1項)。確定書面が期日までに届かなければ、旅行者は無条件でキャンセルできます。
4. 終わりに、旅行者側が無条件でキャンセルできる場合をまとめておきます。支払った代金も払い戻されます。1)契約内容の変更がされたとき(対象が限定されている)、2)旅行代金の増額(運送機関の大幅な運賃増額があったとき)、3)天災地変、戦乱暴動、運送・宿泊機関のサービス提供中止、官公署の命令のあったときで旅行の安全、円滑な実施が不可能と判断されるとき、4)旅行会社から期日までに確定書面の交付がないとき、5)旅行会社の過失で日程どおりの旅行の実施ができないとき、です。 なお、旅行者側は、いつでも一定のキャンセル料を払えば、自分の都合で一方的に旅行契約をキャンセルできますが(約款16条1項)、キャンセル料については契約書に明記されていますので、契約時に確認しておきましょう。 |
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