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相談事例集 |
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■相談事例85: 未公開株
平成19年10月、電話で未公開株の購入を勧められた。話では「年末には上場する」とのことだったので、30株(585万円)購入した。しかし、年末には上場されず、今年の2月になって、「4月に上場することが決まった」と連絡があったが、5月になっても上場されない。同社に電話を入れても電話に出てくれない。どうにかして連絡を取りたい。
(70歳代 男性) |
未公開株にまつわる一般的な苦情事例を伝え、連絡が取れなくなると倒産も考えられ返金の可能性は薄くなるので、早急に書面で通知するか、弁護士等の専門家に相談するよう伝えました。しかし、相談者は「上場期日が延びているだけ」とまだ説明を信じており、「最近、同社宛てに手紙を出したがまだ返事がこない。しばらく待ちたい」とのことでしたので、相談者の意思を尊重することにしました。 |
「未公開株」とは証券取引所に上場していない株のことをいい、新規上場されると初値が購入価格の数倍にもなる可能性のある投機性をもった金融商品のことです。 「貯蓄から投資へ」という時流の中で、平成17年頃から一般消費者(特に50代以上)の未公開株商法の被害が目立ち始めました。永年、預貯金に慣れ親しんできた中高年の消費者にしてみれば、すんなりと株や国債などに投資することもできず、いまだにその金融資産の多くを預貯金の状態で持っている方が多いと思います。しかし、最近はその預貯金も利息は少なくただ預けているに過ぎない状態が続いており、その預貯金が業者に狙われているのです。 特に、ライブドア事件を境に株が身近な存在になったことは否めません。「株とは儲かるもの」というイメージが先行し、その結果、「来年の春には上場する」、「上場すれば1株100万円になる」といった以前ならば問題にもしなかったことに心が動かされ、上場の予定のない株を数十倍の高値で買わされるといった被害が発生し始めたのです。 未公開株の場合、発行会社は通常壌渡制限している場合が多く、株券は一般に出回ることはありません。仮に、壌渡制限のある株を販売会社から入手しても、発行会社の取締役会の承認がなければ、消費者は株主として認められません。 しかし、未公開株の販売、即詐欺というわけではありません。世間には、株式を上場せずに保有しているケースは珍しいことではないからです。 注意が必要なのは、株の取引は、それが上場株であろうと未公開株であろうと、業として販売する場合には、内閣総理大臣の登録を受けることが必要だということです(金融商品取引法28条1項、29条。登録の有無は金融庁のホームページで確認できます)。無登録で営業すると、「3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金刑又はこれらの併科」と規定されています(同法198条1号)。なお、日本証券業協会所属の証券会社は、同協会の自主ルールにより、「グリーンシート銘柄」と呼ばれる未公開株(平成20年9月11日現在で71銘柄が指定されている)以外の未公開株については、原則として勧誘を行っていません。したがって、未公開株を勧められたときは、まず無登録の営業ではないか、つまり、犯罪行為ではないかを疑ってください。 最近の未公開株商法の手口はより巧妙化し、『匿名組合』、『投資事業有限責任組合』、『有限責任事業組合』などの投資組合を隠れ蓑にして「あなたのために特別に」という勧誘も増えています。しかし、このような難しい専門用語に惑わされてはいけません。 かつて、昭和63年当時、リクルート・コスモス株という未公開株を使った贈収賄事件が発生しました。このリクルート事件の場合、未公開株は有力者に対する贈収賄の道具として使われました。しかし、市井の消費者は「どんなに儲かると言われようと、あなただけのとっておきの話はない」ということを肝に銘じておく必要があります。 |
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