|
相談事例集 |
|
|
|
■相談事例86: 業務提供誘引販売取引
インターネットで内職の資料を請求したところ、3日後、自宅電話に勧誘の電話があり、「チラシ配りのバイトをすれば必ず儲かる。月500枚の通信販売のチラシを配り、そのチラシを見た人から当社に商品の注文が入ったらその代金の1割があなたの収入になる。代理店の委託料として毎月1万4600円を3年間払ってもらうが、毎月の売り上げで十分支払える」との説明を受け、契約した。しかし、信用できないので解約したい。
(40歳代 女性) |
同種のトラブル事例を説明し、クーリング・オフの手続きをアドバイスしました。 |
「バイト」とありますが、この事例の場合は、特定商取引法で規制する業務提供誘引販売取引(俗称:内職商法)に当たります。 内職商法というのは、「仕事を紹介するので収入が得られると勧誘し、その仕事に使用するOA機器その他商品類(パソコン、CDーROM、チラシなど)の購入等で金銭負担をさせるものの、実際には当初説明された仕事の紹介がなかったり、紹介されても次第に減少し、結局は高額の負担が残る」というものです。 特定商取引法ではこの「OA機器その他商品類の購入に必要な金銭の負担」を「特定負担」と、「その業務によって得られる収入」を「業務提供利益」といいます。この相談では「…チラシを見た人から当社に商品の注文が入ったらその代金の1割があなたの収入になる…」と説明していますが、相談者は、会社にどのくらいの注文があったのかを知る術はありません。売上げや報酬に関することは、すべて相手の提示する内容に従うのみということになります。 つまり、内職商法というのは、「『業務提供利益』が得られますよと誘って『特定負担』を提供させ、業務提供利益については責任を取らない商法」ということになります。 この相談は、内職商法の分類としては「チラシ配り内職」というものに当たりますが、他には、軽貨物トラック業務委託契約(指定する軽トラックを購入して運送業を開けば、運送の仕事を紹介する)、パソコンの在宅ワーク(所定のパソコンやソフトを購入し、社内検定に合格すれば、入力業務を提供するので収入が得られる)、ホームページ作成(所定のパソコンやソフトを購入し、ホームページを作成すれば収入が得られる)といったものがあります。 内職商法の場合、特定商取引法所定の法定書面を交付された日(初日算入)から20日間はクーリング・オフができます。ただ、契約全体を複雑にして消費者に何の契約をしたのか分からないようにし、法定書面を交付しないことがありますから注意が必要です。 また、内職商法業者の特徴は、経営基盤が脆弱なところが多く、突然連絡が取れなくなったり、倒産することも希ではありません。 元来が顔の見えない取引ですから、「理想的な美辞麗句を並べた契約書を渡されたが、結果的に残ったのは借金だけ」ということになることも多く、救済は大変困難です。 ところで、すでに契約してしまっている場合、どのような相手から借金したことになっているのか再確認してください。仮に、貸金業者であれば、将来、トラブルが発生したときに、信販会社(クレジット会社)を相手にする場合に比べて、解約交渉が格段に難しくなります。しかも、仕事は提供されないのにお金は延々と払い続けなければいけないといった事態が発生するおそれもありますので注意してください。 在宅で仕事をして収入を得ることは容易なことではありません。仕事を始めるに当たり、先行投資を求められるものについてはくれぐれも注意してください(マルチ商法、内職商法など)。「簡単な仕事で高収入が得られるという表現や事業内容が不明確な広告」にはくれぐれも注意が必要です。安易な考えが多重債務への出発点になりかねません。 |
|
|