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相談事例集 |
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■相談事例88: パチンコ攻略本とその周辺
◆相談事例 1年前、「必ず儲かる」との説明があったので、「パチンコ攻略本」を31万8千円で購入し、とりあえず3万円を支払った。しかし、この攻略本ではまったく儲からなかったため販売業者に苦情を言ったところ、「残金は払わなくていい」とのことだった。ところが最近、債権回収会社を名乗るところから未納料金等の費用として34万2千円の支払いを求められている。書面には「当社にはいかなる法令上の取立規制も及ばないので、手段を選ばず回収する」と記載されている。どうしたらよいか。
(60歳代 男性) |
パチンコは法令上どのように規制されているのか、また、このような債権の不当請求を受けた場合の対処方法を説明し、根拠のない要求には応じないよう助言しました。 |
説明を少し補足します。 まずパチンコですが、風俗営業等の規制及び業務の適性化等に関する法律(略して「風営適正化法」)上、「客の射幸心をそそるおそれのある遊技」とされ(射幸心というのは、「偶然の利益を労せずに得ようとする欲心」のことで、ギャンブル性の有無を判断するときの重要な要件となる)、広い意味で競馬や競輪と同じギャンブルの範疇に入ります。ただ、風営適正化法は「善良の風俗と清浄な風俗環境の保持、少年の健全な育成」などを目的として立法されていますから、パチンコ店は「現金又は有価証券を賞品として提供すること」、「客に提供した賞品を買い取ること」等が禁止されています。この点で、合法的なギャンブルである競馬や競輪と一線を画すことになります。 結局、パチンコが客の射幸心をそそるおそれのある遊技である以上、そこに理論的あるいは技術的攻略法などあるはずがありません。仮にあるとすれば、関係者が通謀してイカサマを企んだ場合が考えられますが、そのこと自体一種の不正行為に当たります。セールストークどおりの利益が得られなかったからといって、そのような損害の回復に裁判所が協力してくれるのかも疑問です。やはり、射幸心は起こさないに越したことはありません。 次に、債権回収会社を名乗る団体(以下「当該団体」という」)による債権の不当請求の件ですが、相談者は販売業者から「残金は払わなくていい」と残債を免除されており、すでに債務は存在しないはずです。しかし、販売業者は相談者には免除すると言いながら、一方では、証拠がないのをよいことに当該団体に残債を譲渡した可能性があります(ただし、債権譲渡の通知は、債権譲渡者から債務者に直接行う必要がある)。 「債権」とは、特定の相手方にある行為を要求する権利のこと(この相談では34万2千円の支払いを求める権利)ですが、そのほとんどは契約から発生します。この相談でも当初、契約が存在したことは事実ですが、その後、債務を免除されていますから、その時点で契約の拘束力は消滅しています。しかし、口頭による債務免除ですから、相談者に債務の不存在を証明する手段はありません。 このような場合は、振り込め詐欺の1つである「架空債権の請求」がなされていると考え、「当該団体と連絡を取らない。当該団体の法的手続を待って解決する」という意思を固める必要があります。「怖い」と思ったときはもよりの警察署、消費生活センター、住んでいる自治体の相談窓口などに相談してください。当該団体は「手段を選ばず回収する」と宣言していますから、これは民事上の「自力救済」(不法行為)、刑事上の「自救行為」(恐喝)も辞さないと言っているのに等しく、関係機関はどこでも対応してくれます。 なお、債権回収を業として行えるのは、弁護士とサービサー法(俗称)に基づいて設立されたサービサー(債権回収会社)だけです。 サービサーというのは、@資本金5億円以上、A取締役に最低1名以上の弁護士、B暴力団等の参入が排除されている、C法務大臣の営業許可を受けている、等の要件をクリアした特殊な株式会社のことで、現在、120社前後許可されています。回収できる債権(「特定金債権」という)の種類もサービサー法で定められています。サービサーが、消費者に対して大言壮語し強迫的な言動をとることはまずありません。 この種のトラブルは1人で悩まないことが大切です。前述した関係諸機関に進んで相談されることをお勧めします。相談するだけで精神的負担がぐんと楽になります。 |
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